先の9月30日に米大統領選候補者テレビ討論会がありましたが、結果的には”史上最悪”とか”子供のケンカ”とまで言われるほどの、秩序のない罵声の応酬となりました。
私は以前から、欧米の人たちのスピーチというのは、平気で相手のダメなところばかりを責め立てることで、相対的に自分の優位性を示そうとする表現が多くて、日本的ではないと感じていました。
日本の政治家や著名人がこれと同じような表現でスピーチをしたら、きっと勝てないでしょう。
日本人には日本人の美徳や価値観がありますので、それを大切にしたいと思うと同時に、そこに気がつけないと、最終的には損をするのは自分自身なんじゃないかと思うのです。
相手を卑下することは自分の価値を下げること
これは別に綺麗事で言っているわけではありません。
特に相手と自分のどちらかを選んでもらうとすれば、相手のことを悪くいうというのは極力避けたほうがいいと思っています。
たとえば、自動車でもパソコンでも食べ物でも洋服でもなんでもいいのですが、AとBの2択で悩んでいる場合、それぞれの良い点(メリット)と悪い点(デメリット)を挙げると思うのです。
- Aはこんな素敵なところがある、でもBのこんなところも自分好みである。
- 残念ながらAにはこれが付いていない。Bだとそれが付いている。
など、良い点にも悪い点にも気を配りながら、最終的には自分がそれを得た後の生活までイメージしながら選択していると思います。
これを今回のテレビ討論会に当てはめてみると、相手の候補者のことを悪くいうということは、間接的に「相手はこんなにダメなやつだ」と印象付けることで、「消去法で(あるいは相対的に)、結果的に私を選ぶ」というイメージまでセットで、オーディエンスに与えてしまうのではないかと。
選ぶ方からすれば、「Bはこんなにダメなんだったら、Aを選んだほうがマシか」というイメージです。つまり消去法です。
AとBがこれの応酬だったら、聴衆はダメなAと同じくダメなBの2択を迫られるわけですから、自分たちのリーダーとして選ぶにはかなり苦しいですね。
相手を称える(たたえる)ことは自分の価値を高める
一方で、スポーツの世界だと相手に罵声を浴びせたりせず、むしろ相手を称えるような表現が多く見受けられます。
美談として言っているわけではなく、「Aさんは素晴らしかった」と言って「そしてBはもっと素晴らしい」「素晴らしいAに勝利したBはもっとハイレベルだ」というふうな印象を与えることにつながります。
つまり、「Bも素晴らしいが、それを上回るパフォーマンスを発揮できるのがAだ」ということとなれば、選ぶ方はうれしい悲鳴をあげることでしょう。
仕方なく選ぶのではなく、よく考えに考え抜いて選ぶことを進んでやってくれると思いますよね。
より良い未来をイメージできるのも、この”相手を称え合う方”なんじゃないのかな。
日本人的だけど”世界”に通用する価値観だと思う
よく、茶道や武道のような”〇〇道”においては、(対戦した)相手に対して「けっこうなお手前でした」とか「お見事!」というふうに、少なくとも相手を悪く言ったり蔑んだりすることはありません。
みんな、相手に敬意を払って称えるということが、日本には昔から”文化のレベル”で根付いています。
そこが私は大好きであり、誇らしいと思います。
もちろん、良い面も悪い面を客観的に吟味するということが大前提であり、盲目的にネガティブな視点をシャットアウトしてしまうということが素晴らしいということではありません。
でも、相手の悪い点ばかりを並べ立てたり、罵声を浴びせるというのは、決して気持ちの良いものではありません。
そして、そういう価値観というのは日本人だから素晴らしいと感じるというわけではなく、世界中の人たちにも受け入れられる感覚だと思います。
今回のテレビ討論会は、世の中が鬱々(うつうつ)とした雰囲気にある中で、もっと清々しく明るいニュースであればよかったと思います。
誰もが気持ちよく生きられるような世界を作れるリーダーというのは、自分自身がそれを体現している人じゃなければ難しいでしょう。
だからこそ、現地の国民達ですら「いずれも大統領にふさわしくない」というリアクションだったんじゃないでしょうか。
自分の身の回りでも、相手に対して、あるいはその場にいない第3者に対してもネガティブな発言や、ある意味で言葉の暴力のような悪口を言い放つことがあるかもしれません。
それって、最終的に自分の価値を下げている行為なんだと思うんです。
「自分の周囲には素晴らしい人やモノであふれていて、それらに囲まれて生きている自分は幸せ者だ」くらいに考えておいたほうが、自分だって生きやすいし、周囲だって幸せになれる。
ただの精神論ではなく、理屈で考えたらごくごく当たり前のことなんじゃないかとすら思えてきませんか?
私も、明日からの自分の言動や行動には、さらに気を配っていこうと思っています。
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